2015年9月28日月曜日

ドローンの未来が垣間見られたBREAKTHROUGH SUMMIT。近未来、ドローンはすべて自律制御になる!? ※追記あり


25日に引き続き、ドローンが今度どのように発展していくかの可能性を知るために、主に業務向けにドローンを様々な形で運用、開発している方々による講演が聞けるカンファレンス、BREAKTHROUGH SUMMIT DRONE DAYに伺いました。講演テーマや講演者に関する詳細は、ウェブサイトほうでご確認いただきたいところですが、長年無人航空機の産業利用について研究されてきた千葉大学特別教授である野波先生や長年ラジコンホビー業界で数限りないラジコンヘリコプターなどの小型航空機を設計してきた重鎮であり、現在プロドローンの副社長である菅木氏、さらには堀江貴文氏なども登壇されました。


私は基本ホビーラジコンの世界の人間なので、現在空撮方面で注目されがちなドローンの新しい遊び方などのアイデアがあるのかどうかの確認もしたくて赴いたわけです。そういった面での収穫としては、DRONE GAMESなどドローンのアミューズメント活用を模索する企業による講演、随所で語られたDRONE RACE(例えばDRONEIMAPCT CHALLENGE)など、空撮以外の新たな方向性がいくつか提示され、興味深く聞かせてもらいました。特にヘッドマウントディスプレイなどを活用するFPVでのレースなど、かなり面白そうで、海外ではすでに賞金総額300万円クラスのレースが開催されたり、来年には賞金総額1000万円を超えるレースがハワイでの開催を予定しているそうです。日本にも優れたパイロットはたくさんいるので、こういった場で趣味と実益を兼ねてみてもらいたいものです。

DRONE GAMES社長の黒田氏が登壇。Droneパフォーマーの谷+1さんとともに。


さて、業務向けに関していうと、やはり現在実績を上げつつあるのは空撮、観測、測量などの分野であり、民間から公共機関まですでに様々な場面で活躍しているようで、まぁこれは周知のことと思います。これからの分野として活躍が期待されているのが、セキュリティ、農業利用、運輸などが主なものでした。セキュリティに関しては、警備用として飛ばすこと、農業利用に関しては、ドローンをIoTInternet of Things)のひとつとして捉え、ドローンを農地の上空に飛ばし、発育状況などを観測しデータを蓄積、よりよい発育のために活用してくというものでした。一方で、Bluetooth 4.0になり、BT機器同士が数珠つなぎできるようになったことから、数千個のセンサーを農地に設置、一括管理して観測するというビジョンもすでに提示されているので、ドローン活用とどちらが採用されていくのか、興味深いところです。運輸に関しては、Amazon Prime Airに代表される宅配目的はもちろん、倉庫内で貨物の整理や出荷するために活用していく方向にあるようです。


日本国内だけでも、2020年までにドローン市場は186億円規模に達すると予想されている。
栽培状況をこれまで以上に細かく把握するためにドローンが活躍するかもしれない。ただ、ドローン以外でも農業に関しては、Bluetooth SIGあたりが重要な市場としてのビジョンを持っている。


ここで注目したいのが、これからの活用方法において、ドローンの自律飛行が前提になっているところです。野波教授などがおっしゃっておりましたが、それほど遠くない将来、アメリカでは7万機にもおよぶ商業用ドローンがアメリカの空を飛ぶことが予想されており、そうなるともはや人間のパイロットではまかなえず、かつ管制も難しくなるだろうとのこと。堀江氏にしても、人が操縦するから事故が起こる、これからは自動車もドローンもコンピューターが管理し、人が操作することを禁止する時代がやってくるだろうとおっしゃっていた。


将来的には人がドローンを操縦することはホビー以外ではなくなるだろうと予測する堀江氏。


しかしながら、最近ドローンの墜落を報じるニュースが多い。つい昨日も自転車レースイベントで落ち、しかも炎上までしたそうだ。そんな現状からすると、果たして自律飛行などできるのだろうかと疑問に思う部分はあるが、現在の墜落の大きな要因を占めるのがヒューマンエラーであることが推測されることを思うと、整備など実機航空機のようにマニュアル化、義務化され、コンピューターによって飛行が管理されるほうがいいのかもしれない。そして自律飛行に関して、非常に興味深いお話をされたのが、韓国のINFINIUM ROBOTICS社長であるYohan Kim氏だ。同社のドローンは深セン・香港・マカオ国際オートショーにおいて、Audiブースで複数ドローンによるショーを開催したり、シンガポールにてレストランの給仕をドローンに行わせるデモなどを実現しており、複数ドローンの自律制御や衝突防止システムに関してのかなりの技術を持っているようです。すでに大規模なドローンの管制システムの研究に関して、NASAなどからオファーが来ているそう。複数ドローンが衝突せずにフライトできるのは、既存のシステムに加え、室内にモーションキャプチャカメラを設置し、ドローンの位置をモニタリングしたり、赤外線センサーなどでドローンの位置情報を把握し、独自アルゴリズムを用いたソフトウェアで管理しているそうです。多くのデモは、屋内で行われているが、すでに屋外での運用も研究が進んでおり、赤外線センサーによって木などの障害物を自動でよけることは可能だそうです。今後の課題は、鳥などの高速で飛行している物体をどうよけるかというところとか。同社は韓国の企業ではあるものの、シンガポール政府とも密接に繋がっており、最先端技術の多くをサポートしてもらえる状態とのこと。2013年創業の同社がここまでの技術を獲得しえたのには、そんな背景もあるようです。ここまでくると、近い将来、amazonGoogleによる巨額買収なんて話も出てくるかもしれないレベルですね。


Kim氏による衝突回避システムの解説。赤外線、モーションキャプチャなどなど様々な技術を用途に合わせて組み合わせているそうです。




Audiブースにおけるドローンショー。INFINIUM ROBOTICSが関わっている。

日本においても、プロドローンなどが、ドローンの研究開発の拠点となる『Drone Valley』構想を進めているようですが、INFINIUM ROBOTICSの事例を見ると、また出遅れているな、という印象が拭えないのが正直な感想です。


DRONE VALLEY、早急に整備してもらいたいものです。


他にも面白かったのが、ドローンのスポーツへの活用。最近、ラグビー日本代表がドローンでプレイを撮影し、フォーメーションの修正などに活用しているというニュースが流れましたが、サントリーのサンゴリアスも代表に続いて、ドローンの活用を始めているようです。ただ、こちらに関しては、スパイダーカムのようなワイヤーカメラの活用もできそうですし、先述した農場管理のように、選手個々にセンサーを取り付けて、位置を把握する、などといったことも考えられるので、実際どこまで今後活用されていくのか興味深いところだと思いました。

フィールド全体を俯瞰撮影する際は、各ポジションがわかり易いようにビブスを色分けすることもあるそう。写真のように、スクラムを上空から撮影して力の方向など分析するとか。選手たちにも好評で、これまでの試合ビデオよりも食いつきがよいそうです。


最後に、昨今はマルチコプター型ドローンに大きな注目が集まっていますが、すでに農薬散布において、安全運用の実績があるシングルローターヘリの見直し、さらには飛行機やグライダーなどの固定翼型にも注目したほうがいいのではないかと思いました。フライトタイム、スピード、ペイロードなど、固定翼のメリットは大いにあると思います。マルチコプター含め、回転翼の場合はプロペラにしか揚力を求められませんが、固定翼の場合、翼に揚力を求めることができるので、条件さえよければモーターを回さずとも飛行することができます。ちなみに、もう10年以上前にスイスで取材した、サンライズ・サンセットというラジコングライダー競技があります。夜明けに競技が始まり、日が落ちるまで、いかに着陸回数を少なく済ませるかというのを競うものです。その当時でさえ、9時間近く飛んでいた機体があったので、今後のドローン活用において無視できない存在になるのではないでしょうか。実際、堀江氏は既に固定翼ドローンの開発に着手しているようです。


堀江氏が関わる、インターステラテクノロジスが開発中の固定翼型ドローン。飛行機というよりはグライダー的な設計か。プロペラ後流による舵の効きを確保するため、通常モーターやプロペラは機首に搭載するのが定石だが、尾翼に搭載しているのがユニーク。機首部へのカメラやセンサー搭載を意識してのことなのか、もしくはSTOL性のためなのか、残念ながらテクニカルなことを聞く機会は得られなかった。

※追記
完全自動の自律飛行に関してはまだまだ研究段階にあり、本記事に出てくる事例の多くは、将来において実現されるかもしれない技術です。現状において、安全にドローンを飛ばすためにはパイロットに十分な知識と技術が必要であり、何より空飛ぶものは鳥でも実機の飛行機でも、そしてもちろんドローンも落ちる可能性が必ずあるということを意識していただきたいと思います。



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